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日々これ徒然

essay & opinion

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皿洗いのエチュード(O2E)

皿洗いが好きだ、と言うといつも不思議な顔をされる。
洗い物を極力少なくするために料理を工夫することさえあるらしい。
主婦の嫌いな家事ランキングで8位だが、食洗器の普及がなかったら、もっと上位だったかもしれないそうな。

私も昔は皿洗いが苦手だった。
実家にいた頃は、自分用に作った料理の後で食器や鍋をシンクに置き去りにしては、親に怒られたものだった。
一人暮らしをしていた時も積極的に洗い物をするわけもなく、いつも流しに茶碗やグラスが居座っていた。

自分から皿洗いを志願するようになったのは、結婚して家族ができてからだ。
子供が大きくなるまでは、妻は専業主婦として家事を一手に引き受けていた。
食洗器を買おうと言っても取り合わず、赤切れの出来た手で毎日洗い物をしていた。

ある夜、ワインを二人で一本空けた後に妻が居間で寝てしまい、僕は食器の山とともに取り残されていた。
ふと考えた。これ、洗ってあげたら喜ぶんじゃね?
僕はほろ酔い加減で気持ちよく洗い物を始めた。
コップとワイングラスを先に、パスタの大皿、サラダボウル、取り皿、シルバー類と順番に洗っていく。
油系には初めにパスタのゆで汁をかけておく。
大きいものから小さいものへと洗っては重ねて行き、すすぎの手間と水を節約する。
フライパン、パスタ鍋は傷をつけないように、取っ手の周りは特に丁寧に。
考えながら工夫しながら作業を進めると、あっという間に終わってしまった。
楽しかった。
あとで妻に感謝された。
楽しいうえに感謝される。
やらなきゃ損じゃないか。
それ以来、ことあるごとに皿洗い役に志願している。

これが家事の役割分担などで僕の義務だったら、ここまで楽しかっただろうか?
感謝されただろうか?
仕事も同じで、義務だからする業務と自発的に行う業務とでは、満足感が違うように思う。
僕の場合は、単に妻にうまいこと操縦されているだけかもしれないが。

RAハインラインは「なぜこの世に皿洗い哲学学校がないのか」と嘆いた。
不可解な難問に挑戦する喜びにふけりたかったら、皿洗いはまさに理想的だ、と。
皿洗いにも楽しさを見出せるとしたら、人生はより豊かになると思えないだろうか?

2023年01月10日

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