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日々これ徒然

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(O2E)

本と酒と私 第三章 ハインラインとベーシック・マティーニ[前編] (O2E)

ロバート・アンソン・ハインライン。
20世紀のSF界における三巨匠の一人である。
世界SF協会が毎年選定するヒューゴー賞の長編小説部門を4度受賞しており、これは2020年現在、歴代同率トップとなっている。
彼にとって2回目の同部門受賞作である『宇宙の戦士(Starship Troopers)』は、同名の映画やドラマ等になっている。
作中に出てくる「機動歩兵」と「強化服」は日本のアニメーション作品にも多大な影響を与えたことでも知られる。
そのハインラインが1967年にダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』を押さえて4回目のヒューゴー賞を受賞した作品が、『月は無慈悲な夜の女王』(The Moon Is a Harsh Mistress、1966)である。
2075年に発生する月世界による地球からの独立運動を描いたこの作品には、ボトムアップ型AIやコンピュータ・グラフィックス、宇宙での食糧生産など、現代を先取りしたアイデアが次々と出てくる。
しかし、そうした先進的な発想以上に私の印象に残った(より正確には私の人格形成に大きな影響を与えた)のが、自由や愛国心、人間性などに対する作者の思想だった。
21世紀後半、月には各国から送られた囚人や追放者によってその地下に居住区域を形成されていた。
18世紀に英国がアメリカや南アフリカ、オーストラリアを舞台に行っていた流刑植民地と同じである。
宇宙船もそのパイロットも地球が押さえている以上は、囚人たちが脱走することは不可能。
更に低重力環境で長期間滞在した者は地球に帰っても正常に生活できなくなってしまうため、帰国を望むことは自殺と同義と言える。
月は看守のいらない理想的な監獄なのだ。
また、囚人が月世界で生きていくためには、空気や食料、水の確保だけでなく、月震や強烈な太陽光(強力な放射線を含む)等から身を守らなければならない。
つまり不注意な人間は長生きできないのだ。
同時に無作法な人間も長生きできない。
空気も水も協力し合って作らなければ手に入らない環境では、自分勝手に生きていくことはできない。
『われわれ月世界の市民は前科者であり前科者の子孫です。だが月世界自体は厳格な女教師なのです。その厳格な授業を生き抜いてきた人々には、恥ずかしく思う問題などありません。』
主要な登場人物の台詞であり、この小説のタイトルの元となっている。
月世界人(月=ルナに住む人の意でルーニーと自称している)は努力を重ね、既にルナ・シティ、香港ルナ、ノヴィ・レニングラード、ティコ・アンダー等の都市を建設する。
そして、地球に対して大量の作物を輸出するほどになっていた。
囚人たちの子供や孫の世代が中心となって独自の文化も形成されてもいたが、未だに地球からは犯罪者扱いされ、作物の輸出から得られる代金もわずかなものだった。
そんな地球の搾取と圧政に対して企てられた反乱に、一人のコンピュータ技術者が巻き込まれてゆく。

2020年05月25日

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