■（山岡）

しようしょ

自席に戻るとまずは一服する。
灰皿は何時もきれいにしている。
3本ためてはだめだ。
2本までだ。
これを山岡式という、いや夜のバイトで身に着けた礼儀作法と心得ている。
ダム端でカーソルが山岡を待っていた。
メールが届いている。
「山岡、先日の子たちと飲むから、7時池袋西口ｘｘｘ前集合」
アフター5のお誘いだった。
システム図をそれまでに書き上げて明日には小田先輩に見てもらわねばならない。
俄然やる気も出てきた。
やおら目線を移すと机に1冊の文書が置かれており「山岡へ」と付箋がついていた。
「ｘｘｘ仕様書・・・」
これはもしかしてしようしょのことでは。
ページをめくる。
「はじめに・・・」
文通開始の手紙か？それなら「はじめまして」だろう。
読み進むと何やら困っているようなことが書いてある。
どうやら困っているから相談にのってほしいということらしい。
山岡、普段歩いていると道をよく聞かれる。
気のせいだと思うが、山岡をめがけてお問い合わせを投げかけてくるように感じる。
生来人から相談されやすいタイプなのだと自認している。
さらに仕様書を読み進めてみる。
わからない単語がページを追うごとに増えてくるようだ。
単位も知らないものが散見される。
5ページで飽和した。
だがEthernetという単語は先ほど小田先輩に教わった「いーさんねっ」のことだとつながった。
SEとして当然知っていなければならないEthernetすかさずノートに記録する。
システム図は書けるのか？果てしない予感がする。

2015年12月10日

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