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日々これ徒然

essay & opinion

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(M04E)

初めての北海道 5/5(M04E)

直ぐにエンジンが甲高い音で唸りを上げ始めた。
そういえば、今までの長いタキシング、離陸、巡航、着陸時逆噴射等、飛行機の動力はこのエンジンで行っているのだ。
何しろ特定速度(V2:安全離陸速度というらしい)以上なら、一つのエンジンが止まっても問題なく飛べるほどの出力を持っているとのこと。
飛行機が安全に飛べるのは、エンジンが問題なく動作することが前提。
こう考えるととても呼び捨てなどできない。
エンジンさんである。
エンジンさんが唸りを上げ始めて数秒後、突如機体が動き出した。
エンジンさんの唸り声がさらに大きくなった。
最大出力状態なのだろうか。
今までに経験したことが無い加速度に顔がひきつる。
普段は冗談のような顔を、醜く歪ませながら窓から外を見ても、近くに見えるのは滑走路だけだ。
高い加速度も相まってか、現在の速度が推測できない。
「いつ地面を離れるんだ?」
と半泣き状態でいると、
「空なんて、飛ぼうと思えば」
というエンジンの声とともに(妄想)、浮遊感のような不思議な感覚が襲ってきた。
「これが噂の離陸時浮遊感か」
などと感慨なのか恐怖を感じているのか分からないうちにどんどん高度が上昇しているようだ。
この間窓の外を見ることは出来なかった。
空港および周辺の建造物がどんどん小さくなっていく様をみていると「飛んでいる」ということを強く意識してしまうからである。
外を見ることができないならと、機内に目を向けると、上昇中のため思いっきり機体が傾いているのが分かる。
「外も内もダメだ。
 まるで僕の人生そのものである。
 こうなったら、巡航まで目を閉じて耐えるしか無い」
そうこうしているうちに拍手が聞こえてきた。
離陸後に拍手をするということはネットでは見かけなかったが、なるほど、これも飛行機のマナーなのだろう。
マナーであるならそれに従わねばならない。
閉じていた目を明けて僕も拍手をするが、機内で拍手したのは僕と二列ほど前に座っている親子連れの子供だけだった。
どうも拍手はマナーではないらしい。
しかし僕の拍手にこめた思いは本物である。
巡航後は機体が大きく揺れることもなく、精神的疲労感以外に問題はないまま新千歳に着陸。
着陸は少しハード目だった(違いの分かる男)。
旅行初日は新千歳空港到着後に心身双方の疲労により観光が出来なかった。
それと、帰路の新千歳空港では緊張のあまり楽しみにしていたソフトクリームが食べられなかったこと以外、問題はなかった。
やたらと美味い味噌ラーメンを食べることもできて、旅行の主目的である食も一定の成果を上げた。
旅行は大成功といってよいだろう。
なお、雄大な景色では腹はふくれない、という事実も確認することが出来た。
初めて飛行機に乗り、美味いラーメンを食べた北海道旅行が功を奏したのか、旅行の数カ月後に僕のメンタルはある程度回復した。
また北海道に旅行する機会があれば、ラーメンの食べ歩きをしよう。
もちろんそのときの北海道までの移動手段は飛行機である。

2021年04月09日

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